世の中の通常のタクシー運賃について、私の使用しているメーターを例に説明します。
最初の1.2kmまでが450円、それ以降255mごとに80円加算します、というのがこの写真の示すところです。さらに、渋滞や信号待ちで止まったときにもメーターが止まらないように、時間も加算に入れるしくみを「時間距離併用」と呼び、時速10km/h以下の走行時間について95秒ごとに80円加算するしくみになっています。
時間距離併用運賃
走った距離だけでなく時間でもメーターが上がるということが、実際のメーターでどのように反映されるかという例をあげたいと思います
- 実車ボタンを押し、発車しないでずっと待機していると7分27秒で450円から530円に上がる。
- 信号から信号まで、時速20km/hで走ろうと、40km/hで走ろうと、メーターの上がり方は変わらない。
- 距離計測でメーターが上がる直前に停車した場合、95秒経過せずにメーターが上がる。
- 距離計測でメーターが上がった直後に停車した場合、時間計測に切り替わってもしばらくはメーターが上がらない(メーターが2回立て続けに上がることはない)。
この4つの動きから、それぞれ次のようなことがわかります。
- 7分27秒という数字は、1分35秒を255mに置き換えたときの、1200mの数字と一致する。
- 距離を計測しているときは、時間は関係ない。
- 時間計測の加算は80円ごとの段階があるわけではない。
- 時間計測の加算は80円ごとの段階があるわけではないし、細切れの時間を累積していくわけでもない。
このうち1の例が「時間距離併用運賃」の核心です。1分35秒で80円とすると、初乗り450円を時間計算だけで消費しようとすると8分54秒になり、7分27秒になりません。そこで、1分35秒という時間は80円というよりは80円分の距離255mと等価と考えるとつじつまが合います。やはり、運輸局の説明にも以下のように書かれていました。
時間距離併用運賃
一定速度(限界速度といい、10km/hを超えないものとする)以下の走行速度になった場合の運送に要した時間を加算距離に換算し、距離制メーターに併算する。
つまり、タクシーメーターは距離制が基本にあり、低速走行時はその時間を距離に換算します。1分35秒と255mが等価なので、時速にすると9.66km/h、すなわち10km/hより遅くなったら、たとえ5km/hであれ0km/hであれ、9.66km/hで進んでるものとして距離計算します。時速9.66キロは分速161mですから、信号で1分間停止したら161mの距離が加算されます。この換算部分は、時速10キロを距離計測と時間計測の分かれ目にしている限り、日本中どんなタクシーでもほぼ同じ(約9.5km/h換算)だと思います。
時間を距離に換算するしくみを、私の料金を例に図にしました。
上の図では、乗車後しばらくして信号につかまります。そこで①1分停止し、実際はほとんど車は動いてないのですが、時速9.66キロで161m進んだものとして、上の表の距離に加算します。もうこの時点で、上図の横軸(距離)は実際の走行距離ではなくなります。1200mで初乗りを終え530円に上がりますが、そこまでに実際走ったのはほぼ、1200mから161mを引いた距離になります。こんどは②渋滞に3分間つかまります。時速10キロを切った時点で時間計測が始まり、時速5キロや3キロのノロノロ運転で200mほどの渋滞を抜けたとしても、その間、時速9.66キロで483m走ったものとみなし、距離計測に加算となります。
こうして例えば、距離の合計が2キロになり、お客さんは770円の運賃を払います。しかし、実際に走った距離(乗車地点から目的地までの距離)はそれより短く、2000m-161m-483m+10km/h以下で走った距離となります。
この数字を考慮すると、仮に赤信号が1分とすれば、抜け道が少し遠回りだとしてもプラス161mまでは迂回する意味があると言えます。「停まる」ことはとにかく運賃を上げます。
運転手からすれば、信号が赤でもできるだけ早く信号に到達して、車を停止させたほうがメーターが上がるということです。そのほうが、お客さんのために急いで走っているという感じも出せるので一石二鳥です。
時間制(貸切り)運賃
では、この時間計測さえ動いていれば、運転手は「車が動かない」という状態をうれしく思うでしょうか。いいえ、これはあくまで、到着時間が一定な中での停車、次に信号が青になるまでの停車が運転手に恩恵をもたらすだけです。例えば長時間の待機を求められた場合、10分で500円、30分で1500円ほどになりますが、これを運転手は喜びません。距離換算で言えば、時速9.66キロでずっと走りつづける仕事を強いられるようなものです。このため、走行距離が短く待機時間が長いということがあらかじめわかっている場合には完全な時間制(貸切り)をお願いすることになります。貸切りの料金は、時間距離併用運賃における時間運賃より相当高くなっています。私の場合は30分2550円です。
時間を止める
目的地に着いて、車が停車してもメーターは動き続けます。そのままにしていると、料金を支払う最中にメーターが上がってしまいますので、それを止めるために「支払」ボタンを押します。「支払」は時間計測を止めてしまいます。例えば、目的地に着いたけど、降り場が混んでいて順番待ちのような時、早々に「支払」を押して時間計測を止める運転手と、支払いを押さずに、じりじり上がっていくメーターを眺めるだけの運転手がいることでしょう。それから、同じく時間計測をキャンセルする機能を持つ「高速」ボタンというのがあります。高速道路に乗った時点で、たとえ渋滞にはまったとしても実走距離だけで加算するようになっています。
このページの内容は、自分が使用するタクシーメーターの動きを観察したのと、ネットからの知識で書きました。誤りがありましたらご指摘ください。